気になる人にお話を聞かせていただきました vol.2 ワーク・ライフバランスコンサルタント 新井セラさん

こんにちは!

年内最後の更新になります。

今年も無事、きょうだい会Shirabeを運営できたこと、楽しみに参加してくれるきょうだいさんがいたこと、事故やケガなく毎回笑顔で終わることができたこと、本当にありがたく思います。

それもこれも、参加してくれるきょうだいさん、親御さん、応援してくれる方々、ボランティアスタッフさんのおかげです。

ありがとうございます!

運営スタッフやShirabeに間接的に協力してくれてる夫にもこの際だから感謝しちゃおう。ありがとうっ! ついでじゃないよ。笑

 

いつもこのブログを読んでくださっているみなさん、ありがとうございます。

よいお年をお迎えくださいね。

 

前置きが長くなりましたが……

今年最後の投稿は、「お話を聞かせていただきました」第2弾です。

 

第1弾はこちら 

shiroayu.hatenadiary.jp

 

今回は、Shirabeスタッフのセラさんをご紹介! 

彼女は「働き方改革」という言葉が世間で唱えられるずっと以前から、「働き方」について社会に疑問を投げかけてきた「ワーク・ライフバランスコンサルタント」なのです。

 

 

すべての人が自分で選んだ生き方・働き方で、幸せに暮らす社会の実現を目指して
たくさんの“顔”をもつ新井セラさんが見つめる未来とは

 

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株式会社ワーク・ライフバランスのコンサルタントNPO法人DNAの“センパイ”ボランティア、地方在住の働くママ、そしてきょうだい会Shirabeの運営スタッフ。

 

いくつもの“顔”をもつ新井セラさんですが、その瞳が見つめるものは共通しています。

すべての人が自分で選び、主体的な生き方・働き方を実現できる社会

いろいろな人がいて、いろいろな価値観や人生があって、誰かが誰かの犠牲になったりせず、互いに認め合うことで発展していく社会。
そんな日本になっていくなら日本にいたい。そのための仕事や活動がしたい。

人生における大きな目標を掲げ、邁進するきっかけは何だったのか?
新井セラさんにお話を伺いました。

 

 

「周りと違う」ことについての悩み

 

セラさんはニュージーランド人のお父さんと日本人のお母さんをもつ、いわゆる「ハーフ」。
年の離れたお兄さんが2人おり、6歳年上の2番目のお兄さんは軽度知的障がい者です。
北海道で生まれ育ち、中学生になるタイミングで父・母・2番目の兄・セラさんの4人で群馬県に引っ越しました。

 

”見た目もハーフだし、兄は知的障がいをもっているし、子どものころは目立つ存在だったみたいで、からかわれることもありました“

 

今でこそ、違いを個性・強みとして仕事や活動に活かしているセラさん。
しかし、日本生まれ・日本育ちなのに“外人”と言われたり、障がいのあるお兄さんのことで「わたしは妹だけどお兄ちゃんのお手伝いをしてあげないといけないんだ」とモヤモヤした気持ちを抱いたり。
「自分が周りと違う」ことについて、学齢期は悩んだこともあったといいます。

 

 

人生を支える母の言葉

 

群馬に引っ越してきて3年後、セラさんが高校生の時にお母さんがガンを発病しました。その後セラさんは東京の大学に進学してひとり暮らしをしていましたが、4年生のときにお母さんの容体が悪化。看病のために学校を辞めて、群馬に戻ることに。

お母さんは闘病生活を経て、セラさんが22歳の年に亡くなりました。

 

”家族の精神的な柱だった母が亡くなったとき、言葉にできないくらいつらくて悲しかったけれど、最初に考えたのは「父と兄の生活を立て直すのが、わたしのこれからのミッションだ」ということでした”

 

20代前半の女性には大きなプレッシャーだったに違いありません。それでもつぶれずにいられたのは、生前のお母さんの言葉が大きかったといいます。

 

”母はいつも「自分ですべてを抱え込もうとしないで、あなたにはあなたの人生があるんだから、あなたの人生を歩みなさい」と言ってくれていました。

その言葉のおかげで、わたしはわたしが何をしたいのかをもう1度探してみようと思うようになりました“

 

 

暗黒時代に見つけた光

 

お母さんが亡くなったあと、学士資格を取り直すためにアルバイトをしながら群馬の大学にもう1度通っていたセラさん。

 

“大学をやめて、決まっていた新卒採用もなくなったけど、看病していた母は亡くなって、これからどうしよう……という気持ちで。社会復帰のリハビリという気持ちでアルバイトや勉強をしながらも、2年くらい暗黒時代でした”

 

就職先を考えなくてはならないけど、日本で働きたくない!と思っていたのだそう。

 

“働く大人が不幸せに見えたんです。狭い価値観にとらわれがちで、とっても窮屈そうに見えて。両親の仕事の関係で接点があった、ほかの国の人たちはもっとイキイキしていた。日本では暮らしたくないって思っていました”

 

そんななか、偶然手に取った本で、運命の出会いを果たします。

その出会いとは、「株式会社ワーク・ライフバランス(https://work-life-b.co.jp/)」代表取締役社長・小室淑恵氏の著書。

 

“日本で働きたくないと思っていたのは、長時間労働が大人たちも子どもたちも苦しめ、選択肢を狭めているからなんだと気づきました。働き方が変われば、日本がもっと魅力的になる。働く大人がハッピーになって、大人がイキイキしていれば子どもたちもハッピーに。結果として日本中が幸せになれる。そのための仕事がしたい。そんな日本でなら働きたいし、暮らしたい!って思いました”

 

感銘を受けたセラさんは、持ち前の行動力を発揮。小室氏に「御社で働きたいが、どうしたらよいか」とのメールを送ります。
小室氏は多忙の身でありながら時間を取り、セラさんに会って話を聞き、応援してくれたそう。

 

「うちでは新卒採用はしていないのだけど、もし社会経験を積んでからも想いをもち続けてくれていたら、ぜひまた連絡をくださいね」

 

との小室氏の言葉に、修業を積もう!と決意するセラさん。

日本の働き方改革を推し進めるワーク・ライフバランス社で働くためには、日本の働く大人がハッピーになる手助けをするためには、どんな修行を積んだらいいだろう……と考え、サプライチェーン監査(※1)を請け負う会社に就職。
群馬に住みながら、全国各地を飛び回る工場監査の職に就きました。

 

“監査の仕事は、とてもやりがいがあって、楽しかったです。いろいろな地方や企業を訪れることができましたし、ずっとこの仕事でもいいかなと思ったくらい。でも、監査はどちらかというと、働き方の健康診断だったんです。いい・悪いを伝えるだけでなく、予防や治療、よくなっていくお手伝いをしたいと感じるようになりました”

 

工場監査の仕事を4年続け、株式会社ワーク・ライフバランスの中途入社採用に応募し、入社。
最初の出会いから6年越しで、念願の「ワーク・ライフバランスコンサルタント」としてのキャリアを踏み出しました。


「みんなが自分の望む働き方をして、ハッピーに暮らす」ことが当たり前になり、社会の価値観が変われば、福祉にもいい影響があるのではないかとセラさんは考えています。

女性である自分の働き方、障がい者雇用で働くお兄さんの働き方を考えたとき、多様な働き方が当たり前になれば、健常・障がい・性別・独身・家庭等々に関係なく、みんなが望む働き方ができるようになるのではないか……と。そして、それが日本社会に新しい価値を生み出すことになるはず……と。

 

 

きょうだい会との出会い

 

セラさんはNPO法人DNA(http://npo-dna.org/index.html)がおこなっている「未来の教室(中・高生へのキャリア教育の一環)プログラム」にボランティアとして参画しています。
同じボランティアとして参加していたのが「きょうだい会Shirabe」の銀鏡。そこでひょんなことから、お互いが「きょうだい(※2)」であることを知ります。

 

”あゆさん(銀鏡)と話すなかで、あゆさんからきょうだい会の存在を教えてもらったり、しぶたね(※3)さんの『きょうだいさんのための本 たいせつなあなたへ(http://sibtane.com/#section-18)』を読んで「自分が考えていたことと同じ!」と共感したり……。自分がなんとなく思ってきたことを誰かが代わりに言語化してくれていたような、初めて知ることがたくさんあって、おどろきました”

 

セラさんは続けます。

 

“子どものころから兄のことでいろいろとモヤモヤすることはあったし、同じ境遇の子と出会ったときも「この子もいろいろあるんだろうな。お互い大変ね」って思っていました。でも、それは誰に対しても口にしちゃいけないことだと思っていた。
兄や親の悪口を言っていると誤解されたくないのもあったし、兄弟姉妹の障がいの程度が異なることで、もしかしたらお互いに立場を比べてつらくなってしまうことがあるんじゃないかと思っていたんです“

 

しかし、きょうだい同士であれば、そしてお互いが「モヤモヤした不安や悩み」をもっているかもしれない、モヤモヤしていてもよいのだという共通認識があれば、安心して話せる場がつくれるのではないかと、セラさんは考えるようになりました。

 

“あゆさんが「子どものきょうだいさんを対象にした会を群馬につくりたい。スタッフ募集中」って言っているのを聞いて、「一緒にやろう!」ってすぐに名乗り出ました(笑)。
今は学齢期のきょうだいさんを対象にしていますが、いずれは大人のきょうだい会もできたらなと思っています。
「話せる場」があるというのはたいせつだけど、話してもいいし、自分の話をしたくなければ人の話を聞くだけでもいいし、そういう「受け入れられる場」をつくりたい“

 


セラさんが人生の目標に掲げている「すべての人が自分で選び、主体的な生き方・働き方を実現できる社会」は、進路や就職、結婚、出産に悩むきょうだいたちにとっても、大きな助けとなります。

誰かが誰かの犠牲になったりせずに、自分で選んだ、自分が望む生き方・働き方で、幸せに暮らす社会。

 

コンサルタントとして、母として、きょうだいとして。いろいろな“顔”をもつ「新井セラ」だからこその方法で、多種多様な働き方改革の実現に向けて歩んでいきます。

 

 


※1 サプライチェーン監査とは、企業から、その企業が取引先として検討している会社の労働環境などの調査を依頼される仕事です。
例えばA社が自社商品の部品をB社の工場に依頼しようと考えたとき、B社が取引相手として信用に足るかどうかの調査を、労働環境調査のプロであるサプライチェーン監査会社に依頼するといった具合です。
日本ではまだあまり馴染みがありませんが、世界では当たり前のことなんだそう。

 

※2 障がい児・者を兄弟姉妹にもつ、自身は健常の人のことを、ひらがな表記で「きょうだい」といいます。子どもの場合は「きょうだい児」とも。

 

※3 NPO法人しぶたね(http://sibtane.com/)。病気や障がいをもつ子どもの「きょうだい」をサポートする活動をしています