重度知的障がい者のグループホームでの生活について 後編

10/21(月)に、太田市手をつなぐ親の会主催の研修会がありました。

 

会員の体験談+現場の介護者さんを講師に招いてのお話の2本立ての研修です。

 

今回は、後編。

地域生活援助センターはぁぷ(弟が住んでいるグループホームを運営している)の職員である、川田 格さんのしてくれたお話について、印象的だったことを記録も兼ねて述べます。

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前編はこちらです

 

shiroayu.hatenadiary.jp

 

最初に「グループホーム」ってなあに?

というところからお話しくださって、わかりやすかったのでそのまま。

 

グループホーム(共同生活援助)」とは、ひと言でいうなら「夜の住居を提供し、生活の場を支援するサービス」。

「障がいのある方に対して、主として夜間において共同生活を営む住居で、相談や、その他の日常生活上の援助を行う、障碍者支援法を基にした障害福祉サービスです」

とのこと。

 

知的障がい者の方が住むグループホームというと、多くは軽度知的障がいをもつ方が中心です。

ご自分でご自分のことはできるので、生活の援助や相談……お金の管理やアドバイスですね、そういったことが仕事の中心になり、介助は必要ありません。

お仕事に行ったりお友達と遊びに出かけたり、ほとんどご自分の判断で暮らしていらっしゃいます。

 

ただ、軽度の方だとトラブルに巻き込まれやすいこともあるらしく……

例えば異性に対して誤解を生む行動を、本人にはまったく悪気がないのだけれど、してしまったりだとか、

言葉巧みに騙されてお金をとられてしまったりだとか……

 

そういったトラブルに対する、警察対応とか、緊急対応なんかも少なくないそうです。

 

一方、わたしの弟のように重度知的障がい者グループホームで生活するとなると、相談支援業務というよりは、介助・介護サービスが必要になってきます。

ここが、軽度の方のみが住んでいるホームとは大きく異なる点です。

 

運営者である「地域生活援助センターはぁぷ」にとっても初の試みなので、利用者さんの様子を観察しながら、トライ&エラーを繰り返しながら、少しずつ軌道に乗るように職員さんが努力してくださっています。

 

介護や介助が必要なグループホームってなると、それは老人向けのホームと同様なのでは?と考えるかもしれませんが、介護と障害では、そもそものサービス内容が異なります。川田さんは、「ベース」になる部分が違うので、同じ支援は難しいとおっしゃっていました。

 

「介護」と「障害」の差は、「満足」と「納得」の差なのではないかと川田さんは言います。

 

例えば、認知症が進んだ老人の方に、「納得」してもらうのは難しいです。一度納得してくれたと思っても、すぐに忘れてしまうので、また同じことの繰り返しになります。

「〇〇がしたい」と要求されて、「今日はこれこれこういう理由でできないんですよ」と返して1度は飲み込んだと思っても、すぐに忘れて同じことを要求する。お互いに苦しいです。

ならば、「じゃあ代わりに△△をしましょう。楽しいですよ」と気をそらし、それに利用者さんが「満足」すれば、OKなのではないでしょうか。

介護福祉は、そのときの「満足」がたいせつということ。

 

一方で、知的障がいのある方はすぐに忘れたりはしません。

例えば、とあるゲーム機が欲しいと利用者さんが言ったとします。でもそのゲームを買ったら、その月の生活必需品が買えなくなってしまう。

そういった場合、お金のことについて支援員さんと利用者さんでよーく話し合います。

「〇カ月後に買えるように、今月からこの部分を節約して、3,000円ずつ貯金してはどうでしょう」など、提案をします(決定するのは支援員さんではなくて、あくまで利用者さんです)。

利用者さんがそれで「納得」してくれれば、多少の我慢もできます。

障害福祉は、利用者さんが「納得」してくれる支援がベースです。

 

なるほどなあ~!と、すごく勉強になりました。

そこを踏まえると、介助が必要な重度障がい者の支援は境界があいまいで、とても難しいのだそうです。

自立を促す部分(見守って自分でできることは自分でやってもらう)と、介助が必要な部分(障がいがあるために本人だけの力ではできず、手助けが必要)の統一ができにくい。

また、区分がバラバラな方が一緒のホームで過ごすことで、「あの人はやってもらっているのだから、自分も同じようにしてほしい」と、本来ならば自分の力でできることをしなくなってしまう、といった問題も出てくるそうです。

 

川田さんはしっかり利用者さん一人ひとりに向き合って、観察しながらその方に合った支援をしてくださっていて、とても信頼のおける支援者さんで、ありがたいな~と思いました。

 

グループホームは利用者さんの「家」なので、みんな一緒に一斉に、今は食事の時間、今はお風呂の時間、寝る時間、とルーティンにせずに、なるべくその人のペースをたいせつに、みんなが自分の家で過ごしているように生活してほしい、と語っていたのが印象的でした。